2020年2月9日日曜日

細菌の危険度に応じて色が変化するスマート包帯

細菌感染を感知すると色が変化し、治療してくれるスマート包帯が開発される
iStock-937697882

抗生物質耐性菌は人類にとっての脅威となっている。耐性を身に着けた菌は抗生物質が効かなくなるため、感染症が治りにくくなるのだ。

 人類は耐性菌との終わりなき戦いを強いられているが、そんな中、画期的でカラフルな武器が戦場に現れた。

 それは傷口に潜む細菌の危険度に応じて色が変化するスマート包帯だ。色に応じて治療に必要な薬剤を投与してくれる。抗生物質耐性菌が検出された場合、

 これにより、治療はもちろん、感染拡大を抑えることができるという。

細菌の危険度に応じて信号機のように色が変化

 中国科学院の研究グループが開発した素材は、細菌感染が作り出す酸性微環境に接触すると青から黄色や赤へと変色する。そう、まるで信号機のようにだ。

 もちろん「青」なら細菌はほぼなし、安全だ。これが「黄色」なら細菌がいるという意味で、包帯に仕込まれていた抗生物質が染み出して、自動的に殺菌してくれる。

 ところが、感染した細菌が薬剤耐性菌の場合、それが出す酵素に反応して、今度は「赤」に変色する。

 抗生物質耐性菌に抗生物質はなかなか効果を発揮しない。そこで赤になったら光を当てるのだ。だ。包帯には活性酸素種が仕込まれており、これが光に反応して耐性菌を弱らせる。かくして抗生物質は十分効果を発揮するようになる。

 マウスを使った実験では、普通の大腸菌と薬剤耐性のある大腸菌の感染をどちらも治療することに成功したとのことだ。

 1_e8

抗生物質耐性菌対策として


 抗生物質の乱用によって生じる薬剤耐性菌は世界中で大問題となっている。
 
 だからこそ、感染を検出し、その薬剤耐性をチェックすることは、最適な治療法を決める上でとても大切であると研究グループは話す。しかし、それには専門的な人材や高価な機器が必要になる。

 だが、このスマート包帯ならばそのような専門的な人や機器は必要ないし、持ち運びも簡単なので、さまざまな地域で使うことができる。
iStock-944106856_e

医師の診察がなくても包帯を巻いておくだけで治療できる

 このスマート包帯なら、何度も病院に通うことなく、包帯を巻いておくだけで適切な薬剤が使用され、早いうちに感染が悪化する危険の芽を摘むことができる。

 また医師も、包帯の色を見れば、患者は感染の状態がどうなっているのかリアルタイムで知ることができる。こうしたメリットがもたらす可能性はきわめて大きいだろう。

 たかが包帯と侮ることなかれだ。技術の進歩により近年いくつか大きな進歩が見られている。

 たとえば、細菌を吸い寄せ、傷の治りを早くするナノファイバーメッシュや、細菌の増殖を抑え、感染のリスクを低める火傷用包帯といったものがあり、ただの布切れに思えてなかなか奥深い世界だったりするのだ。

 この研究は『ACS Central Science』(1月29日付)に掲載された。

0 件のコメント:

コメントを投稿

その時代に生きた人々の息づかいが感じられる写真集に

1985年~1986年の大阪で撮影された1000枚超ものモノクロ写真が一挙公開、その時代に生きた人々の息づかいが感じられる写真集に 2020年2月8日、 kouichi morimoto さんが1985年から1986年ごろに大阪で撮影した1000枚もの写真を、写...