小泉進次郎環境大臣が今月15日、環境省で開かれた「選択と集中実行本部」会議に出席し、育児休暇を取得する意向を明らかにした。昨年フリーアナウンサーの滝川クリステルさんと結婚、1月中に第一子が誕生予定だ。
小泉氏は第一子誕生後の3カ月間で短時間勤務やテレワークを組み合わせ、合計で2週間ほどの育児時間を確保するといい、育休が取得できる“空気”をつくっていきたいと述べている。
<制度だけでなく空気を変えていかなければ、(育休を)取得する公務員も増えていかない。私をきっかけに、みんなが臆することなく取得しやすい働き方が進むことを期待している>
小泉氏が最初に育児休暇取得の意向を示したのは昨年9月だが、ネット上では賛成だけでなく、「国会議員は公務を優先しろ」と反対する意見もあり、賛否両論となっていた。
そして現在も、「大臣は国のために働くことを優先して欲しい」「この夫婦、どうしても育休取らなければ回らない事情はないでしょ」「国会議員が国民をバカにしている」といった批判の声は多い。
他方で、「目立つ立場の男性が積極的に育児するのは社会の意識を変えるから良いこと」「どんな立場であろうと休んでいい」「海外では首相だって育児休暇を取っている」等、小泉氏の育休を支持する声ももちろんある。
男性、しかも立場のある男性の育児への関わりについて、小泉氏はたしかに議論の“きっかけ”を作っていると言えるだろう。これを機に、特定の個人に過剰に依存せず、重いポジションの人物が不在であっても問題なく機能する組織づくりを促進していくべきだ。
ちなみに国会議員には、一般企業のような「育児休業制度」はないため、小泉氏は欠席届を提出して休暇を取得することになる。しかしこれは女性議員が任期中に妊娠出産となった場合を想定しておらず、2017年に鈴木貴子衆議院議員が切迫早産のため安静療養していた際、“一旦辞職すべき”“職務放棄”との誹りを受けて苦悩したと告白したこともある。
「仕事か育休か」の二択も苦しい
これまで、複数の地方自治体の首長が積極的に育児をし、仕事一辺倒でない生活の仕方を発信してきた。市長や知事が育休を取得する場合も、取得期間は数日間、あるいは一日の数時間を育休として公務を入れないというもので、数カ月単位で休業するケースは少ないが、それでも一定の効果はあるだろう。
たとえば愛知県西尾市の中村健市長は、昨年9月に第二子が誕生し、11月からの2カ月間、「午後6時以降の公務を控える」という形で、育休の時間を確保した。
一昨年11月には、栃木県矢板市の斎藤淳一郎市長が三女の誕生に際して3日間の育休を取得。子どもの習い事の送迎などを行ったという。
こうした男性の育休の形には、「育休と言えるのか」「民間企業の手本にならない」といった批判もある。しかし、仕事か育休かの二択も極端ではないか。
様々な育休の形を模索し、時短勤務やテレワークなど仕事と育児が両立しやすい職場環境をつくっていくことも、男性の育児参加を推進する手段だ。そして男女を問わず、仕事と育児を両立する労働者の生活しやすさにつながるだろう。
千葉市は時間単位の有給休暇を推進
課長クラス以上の職員に「イクボス宣言」をさせたことで有名な千葉市の熊谷俊人市長は、2009年の就任以来、働き方改革に取り組み、男性の育休取得を推進してきた。ちなみにイクボスとは、男性社員の育児参加に理解のある上司のことだ。
千葉市男性職員の育休取得率は年々上昇傾向にあり、2015年度5.8%、2016年度10.3%、2017年度22.9%、2018年度34.3%となっている。
また熊谷市長は、育休だけでなく時間単位の有給休暇である「時間休」も推進。企業が1日や半日単位での有給休暇だけでなく、1時間や2時間の時間休を柔軟に取り入れることが男性の育児参加につながると、「@人事」のインタビューで語っている。