2020年1月15日水曜日

「女性専用車両に乗りたくない女性」の声

女同士の罵り合いショーにされる「女性専用車両に乗りたくない女性」の声
女同士の罵り合いショーにされる「女性専用車両に乗りたくない女性」の声の画像1
「女性専用車両に乗りたくない女性の意見」が複数のメディアで取り上げられ、物議を醸している。
 今月13日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)では、女性専用車両に乗りたくない女性が増えているとして、女性専用車両で繰り広げられている女たちのバトルを特集したが、その内容から、Twitter上では「BPOに報告する」との批判が出ている。

「男の目がないと、女はひどい振る舞いをする」

 まず番組では、街頭の女性たちに「女性専用車両に乗りたくない理由」をインタビュー。女性たちは、<香水の匂いが強いときつい><においが混ざり合う><席の奪い合い><吊り革につかまらせてくれない><ハイヒールで踏まれた>など、においやスペースの奪い合いの問題があるから乗りたくないのだという。
 また、インタビューに答えた女性たちは、女性専用車両でそういった問題が起こってしまう理由について、「男性の目がないから」だと語る。
<男性がいたら男性の目を気にしてちゃんとしてても、女性だけだから『私が座るわ!』とか『そこは私の空間よ!』的な感じの人がいる>
<女子だけしかいないから周りの目が気にならなくなっちゃう>
 またスタジオでは、<驚きの実態>として、番組の調査では50人中35人の女性が女性専用車両には「乗らない」と回答したことを発表。
「乗らない」理由としては<ヒールの人が揺れに耐えられずに持たれかかってくる><(乗客同士が)周囲の視線を気にせずスマホに没頭><二人の女性がブランドかぶりでマウント>などが挙げられた。
 電車内での匂いやスペースの奪い合いは、女性専用車両に限って発生するトラブルではないが、番組ではそこに“女”というバイアスをかけ、「女同士は面倒くさい」「男の目がないと女は好き放題する」と決めてかかっている。典型的なミソジニーと言えるだろう。女性嫌悪は男性だけではなく、女性も持っている。
 番組アシスタントの斎藤ちはるアナウンサーが、女性専用車両は「ストレスが溜まる」ため、あまり乗らないようにしていると発言すると、羽鳥慎一アナウンサーは「年上の女性がマウントを取っている」との持論を展開した。
<(斎藤は)人として若手だからですよ、やっぱり>
<高年齢の人に、上から見られるじゃないですか。だから優しくされないんですよ>
<だって30歳の人から見ると(斎藤は)『この若いのが』ってなるじゃないですか。『私のポジションに』って>
 女性同士の罵り合いを「ショー」として消費し、男性が見物する構図がそこにある。また、「そもそも女性専用車両など不要」と言いかねない構成も大いに疑問だ。女性専用車両を必要とする乗客は確かにいるにもかかわらず、見えない存在になっていないか。

女性専用車両を必要とする人々がいる

 主に朝や夕方の混雑時に導入されている女性専用車両は、2000年代に普及した。痴漢を含む性犯罪被害を受けた経験から、女性専用車両でなければ混雑する時間帯の乗車が難しいという人もいるだろう。また、病気や怪我、障害、妊娠中、子連れなど、ラッシュ時の一般車両を利用することの負担が大きい人も女性専用車両を必要としている。
 また、女性専用車両に乗りたくない理由として、番組では場所取りやマウント取りが強調されていたが、乗らない人が多いのはそれだけではないだろう。女性専用車両の多くは一番端の車両であり、コメンテーターの山口真由弁護士は「(ホームの端)にあるから利用しづらい」と発言していた。
 容姿と痴漢被害が結びついていると誤解している人からの「あなたは痴漢に遭わないでしょ?」という視線が気になり、女性専用車両に乗れないという人もいる。こういった意見も番組内で紹介はされたものの、どう改善させるかという理論が展開されることはなかった。
 女性専用車両を「女同士の戦い」としてコンテンツ化することは、「女性専用車両に乗るやつはろくな奴がいない」「女性専用車両など無くせばいい」という印象を与えかねない。せっかく女性専用車両があるのに、それを必要とする人々が利用をためらうような空気をメディアが作っていいのか。

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