「インターネット税」をめぐって波紋が広がっている。20日、経産省が5G(第5世代移動通信システム)の整備にともない、ネット利用者への「負担金制度」の導入を検討していると報じられた。ネットでは「インターネット税」の導入に対する反発の声が強まっている。
5Gとは、高速大容量・低遅延性・同時多接続を可能にする通信システムのこと。その通信速度は、現行の4Gのおよそ100倍にもなるといわれる。
昨年4月には、総務省がNTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルに電波(周波数帯)を割り当てた。5Gは中国や米国ではすでに導入されており、日本も2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えて今春のサービス開始を予定している。
産経新聞などの記事によれば、経産省は5Gの基盤となる光ファイバー回線を全国的に維持するため、ネット利用者に1契約につき数円の「負担金制度」を徴収することを検討しているという。負担金は月額の利用料金に上乗せして徴収した後、事業者に資金を交付して回線の補修・更新に充てる。
しかしこの「負担金制度」について、ネットでは「インターネット税だ」として批判が殺到した。
経産省「ネットの噂はデマ」
22日放送の『モーニングショー』(テレビ朝日系)はこの件を取り上げ、ITジャーナリストの三上洋氏は「日本の5Gは世界と比べてスタートの段階で1年の遅れがあり、基地局整備は2年ほど遅れている」とコメント。「負担金導入の背景には、日本の焦りがある」と指摘した。
また、ビジネスインサイダージャパンの統括編集長・浜田敬子氏は「過疎地域まで整備するとなると、事業者だけでは難しいという発想なのでしょう」と分析。そのうえで「このインフラで事業をしていくのは、キャリアを始めとする事業者なので、私は事業者が持つべき」「無理だというのなら、携帯の利用料金を下げるなどして、相対敵に利用者の負担が増えない形で考えてほしい」と意見を述べた。
他方、コメンテーターの玉川徹氏は、5Gのリスクを指摘。ドローンや無人の農業機械がハッキングされる恐れや、米国で懸念が広がっている健康被害などについて触れ、スタジオでは議論が交わされた。
放送後の反響は大きく、ネットでは「インターネット税」に対して「ネットさえお金取るの?」「信じられない」などと反発の声が加速。Twitterで「インターネット税」というワードがトレンド入りし、さらに「ネットユーザーから1000円を徴収する」などと尾ひれのついた噂も流れた。
しかし「ITmedia NEWS」は22日夕、総務省が「ネットユーザーから1000円徴収するといったネットの噂はデマ」と否定した、と報じた。「20年代半ばから徴収を開始する」「今春に有識者会議を立ち上げる」といった噂についても、経産省は「まだ決まったことは一切ない」と答えているという。
https://wezz-y.com/archives/58955
現状、多くの人にとって5Gは必要なくても…
5Gによって可能となる高速・大容量の通信は、将来的に車の自動運転技術や医療分野への活用が見込まれている。IoT(あらゆるモノがインターネットにつながり実現する新たなサービス)化が拡大するなかで、5Gが「新たな社会インフラ」として期待されていることは確かだ。
今年度、経産省は、5Gの前提となる光ファイバーを、都市部だけでなく全国に整備するため、52.5億円の予算を確保していた。
さらに21日には、高市早苗総務相が、5Gの次の世代となる6Gを、2030年をめどに実用化することを目指した有識者会議の発足を発表。5Gの技術開発や商用化で中国や米国に遅れを取ったことを反省し、検討を急ぐという。
22日には、NTTドコモがはやくも6Gに向けた技術コンセプトをまとめた資料(ホワイトペーパー)を公開。日本の姿勢は決してスピード感に優れているとは言い難いが、それでも技術革新は着実に進んでいる。
ただ、こうした新技術についていけない消費者も少なくはないだろう。スマホなどは限られた人との通信手段、かつ高価なゲーム機程度の使い方しかできないのに、毎月高額な機器代金と使用料を支払い続けているユーザーも多いと考えられる。
多くの人にとって、それほど高いスペックは必要ではないし、あったところで便利に使いこなせもしないのに、技術はどんどん進歩させなければいけないのだから、厄介なものだ。そして通信が社会のインフラである以上、その維持にかかるお金をひとりひとりが負担するという「負担金制度」も、たとえ現時点でデマだという説明が事実であっても、遅かれ早かれ検討の時はくるのではないだろうか。
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