2020年1月16日木曜日

関係を長続きさせるために最重要なのは

関係を長続きさせるために最重要なのは「肯定すること」でなく「否定しないこと」




新婚当時は仲がよかったのに、時間がたつにつれ愛情を示さなくなり、離婚へと向かうという例は多くあります。ここから、人間関係を長期的に継続させるために「当初の大きな愛情」がそこまで重要ではないことが読み取れますが、クイーンズランド大学心理学教授のロイ・ボーメイスター氏とジャーナリストのジョン・ティアニー氏は、最重要事項として「否定しないこと」を挙げています。数多くのカップルを調査することで明かされた、「カップルが否定性によって破綻する仕組み」が解説されています。

感情はポジティブな出来事よりもネガティブな出来事に反応する傾向にあり、「ネガティブ効果」と呼ばれるこのような現象によって人の思考はゆがめられています。たとえば賛辞と批判を受け取った時、人は賛辞に満足するよりも批判に執着する傾向にあります。ネガティブ効果は人が進化の過程で脅威を避けるために発達させてきた現象ですが、同時に、人の思考や行動を大きくゆがめるのも事実です。

人間関係においては、ネガティブ効果はパートナーの欠点をより大きな問題にみせます。人は頭の中で自己を過剰評価する傾向もあるので、「私はこんなにもやっているのに、なぜあの人は私に感謝しないのだろう?」と、相手のいい所が見えなくなり欠点ばかりが目に付くようになります。


これまでに多くの心理学者がカップルの幸せについて調査を行ってきました。その中の1つである、夫婦におのおのの満足度について評価してもらうという調査で示されたのは、「基本的に時間の経過と共に評価は下がっていく」ということ。これは必ずしも悪いことではなく、ほとんどのカップルは相手以外のものから結婚生活の満足を得ることで全体としての満足度を手に入れます。一方で、満足度が急激に低下することもあるとのこと。カップルを観察した結果、研究者はなぜカップルが破綻するのかという驚くべき理論を発見しました。

たとえば、パートナーが浪費や浮気で自分を不快にしていた時に、人が取り得る行動を以下の4つだと仮定します。

1:成り行きに任せて状況がよくなることを願う
2:何が自分を不快にしているのかをパートナーに説明して妥協案を見つける
3:何もしないし何もいわないがパートナーから心理的に距離をあける
4:別れると脅したり新しいパートナーを見つけたりする

4つの選択肢は「建設的あるいは破壊的」「受動的あるいは能動的」に分類できます。一見すると効果的なのは「2」のような建設的な選択肢ですが、調査の結果、実際にはそれほど重要ではなかったとのこと。また受動性や能動性もそこまで大きな差異を生み出しませんでした。もっともカップルに大きな影響を及ぼしたのは「破壊的」な選択肢で、「何もいわないが心理的に距離をあける」「別れると脅す」といった破壊的な選択肢をとると、人間関係がネガティブのスパイラルに突入してしまうそうです。


また、カップルを長期にわたって観察するProcesses of Adaptation in Intimate Relationships(PAIR)というプロジェクトでは新婚2年目のカップルにインタビューを行い、相手との関係のポジティブな側面とネガティブな側面を評価してもらいました。

すると、カップルのほとんどが関係について双方向の愛情を示しましたが、この時の感情は、その後の結婚関係の持続の予測因子にはならなかったとのこと。数十年が経過して判明したのは、長期的に幸せな結婚を続けたカップルよりも、離婚したカップルの方が結婚当時に示していた愛情が大きいということ。ここから、ポジティブな感情は結婚を長続きさせるために役立たないという結論が導けます。それよりも、ストレスや疑念、問題といったネガティブなものをどう扱うかの方が、関係の持続には大切だと考えられています。

心理学者のサンドラ・マレー氏とジョン・ホームズ氏の調査では、カップルを研究室で背中合わせに座らせ、テーブルに向かってアンケートに答えてもらいました。研究者はカップルに対して「同じアンケートに答えてもらう」と説明しましたが、実際にはアンケートは別のものでした。

夫婦に渡されたアンケートの1つは「相手の嫌いなところ」を書いてもらうもので、他方は「家にある全てのものをリストアップする」というものでした。このため、平均して1年半の関係を持つカップルの一方は相手の嫌いなところを1~2個書いてペンを起きましたが、もう一方は「最低25個」と指定されたアイテムを時間をかけて書き連ねることになりました。


このとき、早々にペンを置いたパートナーは「相手が自分の悪いところをたくさん書き連ねている」と考えました。最終的な種明かしの前に被験者たちが相手との関係について質問を受けたところ、「パートナーは自分を評価している」と理解する自尊心の高い人は相手の行動の影響をあまり受けない一方で、自尊心の低い人は「批判された」と強い反応を示したとのこと。

パートナーが自分の批判を書き連ねていると考えた自尊心の低い人は、その恐怖の影響を、「パートナーへの愛情と敬意の評価を下げる」という形であらわにしました。実際にはパートナーに評価されていたにも関わらず、不安を持つ人々は不必要にパートナーの行為に反応したとのこと。このような、自分を守るために相手を批判的にみる傾向が、人間関係に対して有害な影響を与えるとみられています。

また、このような反応には性差があることも研究では示されています。不安傾向が強い男性はパートナーである女性の不倫に対して恐怖を向ける傾向が高く、女性の場合はパートナーの不倫以外の拒絶に反応する傾向が高いそうです。

一方で同性カップルの場合は否定性の影響が少ないこともわかっています。研究者が同性カップルを10年以上にわたって追跡したところ、男性同士のカップルも女性同士のカップルも、異性愛カップルよりも争いが起こった時に楽天的である傾向が示されました。


異性カップルの場合、「女性の要求、男性のひきこもり」という対立の典型的なパターンがあり、女性が苦情や批判を開始し、男性がそれに対してひきこもる反応を示すことが、破綻のサイクルになっているとのこと。しかし、同性カップルの場合はこのようなケースがあまり起こりません。男性は苦情を申し立てる可能性が少なく、女性は批判に対して引きこもることがないためです。

多くの人は人間関係において「否定すること」がどのように影響するかを考慮しませんが、行き違いや問題が発生したときに否定性の影響を念頭に置いておくことが重要だと考えられます。

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