2020年1月21日火曜日

子どもを人として尊重する

子どもを人として尊重する「信頼できる大人」を増やす、PIECESの活動
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 貧困家庭や児童虐待をめぐる社会問題が大きくクローズアップされるようになって久しい。困難な状況下にいる子どもが、安心して頼れる大人の不在により、社会的に「孤立」することもある。 学校や医療など公的支援期間と疎遠になり孤立してしまうと、その後のライフプランに大きな影を落とす。孤立までいかなくとも、安心して相談できる相手が周囲に見つからない子どもは、どれだけ不安だろうか。
 これを家庭内の問題ではなく「社会の」問題として捉え、解決に向け具体的な活動をしている団体がある。2016年に設立された「認定NPO法人PIECES(ピーシーズ)」では、地域社会で孤立した子どもの日常に寄り添い、「信頼できる他者」たる市民支援者(旧:コミュニティーユースワーカー)を育成する仕組みを広げる活動をしている。
 では、子どもにとって「信頼できる他者」とはどんな大人なのだろう?「PIECES」代表理事を務める児童精神科医の小澤いぶき氏に、PIECESが大切にしている子どもとの接し方、市民支援者の育成方法について話を伺った。
小澤いぶき 認定NPO法人PIECES代表理事/Co-Founder 東京大学医学系研究科 客員研究員/児童精神科医
精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。さいたま市の子育てインクルーシブモデル立ち上げ・プログラム開発に参画。 2016年、ボストンのFish Family Foundationのプログラムの4名に推薦されリーダーシップ研修を受講。2017年3月、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待、子どものウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。

子どもたちを「貧困の子」「助けなきゃいけない存在」として見ない

――まず、孤立している子どもには、どのような背景があるのでしょう?
小澤:必ずしもその背景があることが、孤立につながる訳ではないことを前提にしていただきたいのですが、例えば、家庭自体が地域から孤立している場合。あるいは、学校とうまくマッチせず、ほかに学ぶ環境がなく、社会からも孤立している場合。中退などにより、学校との繋がりが途絶えてしまった場合など。家庭や学校に居場所がなく、彼らを支える地域のつながりも持ちにくいことが多く、地域からも孤立してしまう可能性があります。
――PIECESでは市民支援者を育成し、地域と子どもを結びつける役割を担っていらっしゃいますよね。PIECESホームページにある動画で、小澤さんがは「子どもを社会を構成する一人の人として尊重し、そしてそのことこそが守ることにつながるのではないか」と語っていて、印象的でした。
小澤:市民支援者は、その子が抱える「困難さ」だけに目を向けるのではなく、あくまでも子どもを「ひとりの人」と して接し、お互い尊重し合える関係を一緒に築いていくこと が大切だと思っています。
――実際には「支援」しているのだから、矛盾していると言う人もいるかもしれません。
小澤:なぜ、「子どものために」ではなく「子どもと一緒に」を大事にしているのかというと、「貧困の子」「助けなきゃいけない存在」という視点で子どものことを見た途端、彼らの持つ多様性や複雑な豊かさが見えなくなってしまうからです。
困難やしんどさを抱えている子でも興味や関心ごとはあります。たとえば、貧困家庭の子どもでもゲームが好きだったりしますよね。大人が勝手に「貧困だからこうだ」と、その子の人間像を決めつけてしまうのではなく、ひとりひとりに寄り添っていきたいと 、私たちは考えています。
――それは、我々メディアももっと強く意識しなければいけないことですね。
小澤:市民支援者が子どもに対して、「ひとりの人として尊重すること」を心がけることで、子どもは「この人は自分を勝手に判断しない」「価値観を押し付けない」「安心して困りごとや悩みごとを話していい」と思えるようになり、心を開きやすくなります。
そして子どもは、大人に好きなことや、悩みごとを話した結果、自分の周りにさらにつながりができ、自分の望みが叶うという体験をすることができます。自分の好きなことがちゃんと形になる、自分の手で自分の未来をつくっていけるような体験をすることも、子どもの成長には重要です。
――自己肯定感の育成において、非常に大切なステップですね。
小澤:そうですね。それに加えて、大人が子どもを「ひとりの人」だと意識して接することによって、子どもたちは自分の持っている感情にも気づきやすくなっていきます。たとえば自分の中にある複雑な気持ち。「辛いことが多いけど、これをしているときは嬉しい」といった感情に、子ども自身が気づいていけることを大切にしたいと思っています。

「市民支援者」になるには 6カ月の育成プログラム

――市民支援者は子どもの“専門家”ではなく、いわゆる一般市民の方々ですよね。そのほうが、子どもとの「尊重し合える関係」を築きやすかったりするのでしょうか。
小澤:市民支援者の方々は、 6カ月の育成プログラムを受けますが、子どもの専門家ではありません。しかし、非専門家だからこそ「ひとりの人としてお互いに関わる」ことがしやすくなります。また、学校の先生とは違い「利害関係のない大人」のため、子どもとフラットな関係性を築くことができます。
――市民支援者の育成プログラムでは、どのようなことを行うのですか。
小澤:育成プログラムは6カ月間で、プログラム内容は、「講座」「現場実践」「ゼミ」の3つです。「講座」は、6カ月間の中で月に一度集まってもらい、子どもの発達を学んだり、 「子どもの生きづらさ」をテーマに実践者や当事者の方の話を聞く機会を設けています。
一週間に一度か二週間に一度、その人のペースで、実際に子どもと関わってもらうのが「 現場実践」で、月に一度の「ゼミ」では、この「現場実践」についてPIECESメンバーやメンターとともにリフレクション( 内省的な振り返り)を繰り返します。
プログラム全体を通して、市民支援者は自分の子どもへの関わり方は、「本当に子どもの願いを聞けているのか」「子どもにとってよいのか」を考えます。同時に、自分自身の子どもへの関わり方の背景にある価値観や願いや気持ちを徹底的に振り返って知る、自己覚知を行います。その上で、子どもという他者をきちんと想像するためのマインドセット(考え方の枠組み)をつく ります。
――プログラムを受けた市民支援者は、子どもたちとどういった場所で交流をするのでしょうか?
小澤: 出会う場所、出会い方は子どもたち一人ひとりの状況によって様々です。たとえば、自分から外に出向くことが苦手な場合には、行政機関の方々と一緒に家庭訪問します。あるいは、地域の古民家をお借りしたり、企業の空きスペースをお借りして、食事やゲーム、創作活動を一緒にするなどしています。
――市民支援者がどの子どもを担当するかは、どうやって決めていくのでしょうか?
小澤:基本的に、子どもひとりに対して市民支援者ひとりを担当としてつけるような マッチングはしていません。ひとりの子に複数の市民支援者が関わるなどをしながら少しずつ、この子が心を開きやすいのは誰か 、相性はどうかと、探りながら何人かの市民支援者とつながって いきます。
――最後に、 PIECESは今後、どのような活動を目指していますか。
小澤:PIECES 設立当初は、都内で市民支援者の育成、育成した市民支援者の方が地域で子どもたちと関わるための仕組みづく りを行ってきました。 現在は、市民支援者育成プログラムの全国展開を目指しているところです。
現在の活動場所は、東京および水戸ですが、それぞれの地域によって事情が異なります。そのため、私たちがただプログラムを地域に持ち込むのではなく、地域の人たちと思いを共有し、その地域特有のプログラムを整えていくほうが好ましいと考え、チャレンジの真っ最中です。
ゆくゆくは、親御さん向けの研修や大人が学ぶためのコミュニティなど、子どもと寄り添う大人たちがつながり、学び合える環境 をつく っていきたいですね。 
※ PIECESへの寄付はこちらから受け付けています

2020年1月20日月曜日

アメリカではアルコール関連の死亡率が増加

アメリカではアルコール関連の死亡率が増加、特に女性が急増している

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アメリカ国立衛生研究所の機関である国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)が、米国の死亡証明書データを分析したところ、1999年から2017年の間にアルコールが原因で亡くなったアメリカ人は100万人近くになることがわかった。

 アルコール関連死は、1999年には3万5914人だったのが、2017年には7万2558人と2倍以上に増えており、2017年の全米の全死亡者数の2.6%を占めるという。

 特に女性は深刻で、調査期間中の死亡率が85%増加したことがわかった。これは過去数十年間の女性のアルコール消費量の増加と関連している。 

アメリカで増加するアルコール関連死


 アルコール関連死の増加は、アルコール消費量の増加やアルコール絡みの救急搬送・入院の件数が増加しているのと一致している。

 「アルコールは体にとって異物で、ときに命にかかわる原因になることも多いのです」NIAAAのドクター・ジョージ・F・コーブは言う。

「この調査結果は、アルコール絡みの怪我、過剰摂取、慢性疾患を含めたアルコール関連死が、広い範囲で増えていることを示していて、公衆衛生に影響を与えるアルコールの脅威が増していることの警鐘なのです」

 新たな研究では、NIAAAの上級科学アドバイザーのアーロン・ホワイトらが、1999年から2017年までの全米の死亡証明書データを分析した。

 アルコールが誘発あるいは根本的原因として明記されている場合は、アルコール関連死として特定される。2017年、アルコール関連死の半数近くが、肝臓疾患(31%、2万2245人)または、アルコールのみまたは他の薬物との併用過剰摂取(18%、1万2954人)によるものだった。

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あらゆる年齢層、人種で増加傾向


 アルコールによる死亡率がもっとも高いのは45~74歳の人たちだが、最近は25~34歳の若者も、死亡率の上げ幅が最大になった。

 中高年の高い死亡率は、「絶望による死」が増えているという最近の報告と一致している。「絶望による死」とは、おもに非ヒスパニック系白人のアルコール過剰摂取、飲酒が原因の肝硬変、自殺に関連する死として一般に定義される。しかし、最近のアルコール関連死はあらゆる年齢層、人種で増加傾向にあるという。

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特に女性に顕著


 だが、特に顕著なのが女性で、アルコール消費量の増加とそれに伴う救急搬送が増え、アルコール関連の死亡率は、男性(35%)なのに対し、女性(85%)のほうが増加した。

 かつてはアルコール摂取とその被害においては、男女で大きな差異があったのに、最近は縮まっている。

 一日たった1杯のアルコールを摂取するだけでも、女性が乳ガンになるリスクが高まる可能性を示す証拠が多く出てくるようになった。女性は男性よりも、アルコールが関わる心臓血管疾患、肝臓疾患、アルコール使用障害などの危険性が高いようだ。

「アルコールはとくに女性の健康被害を拡大させます」コーブは言う。「女性のアルコール関連死の急増は深刻で、この数十年間の間に女性のアルコール消費量が増加したことと比例しています」

アルコールが死亡の原因だったとしても、死亡証明書に明記されることはあまりなく、2017年の実際の死者は7万2558人よりもはるかに多い可能性があるという。

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「今度の研究結果とほかの研究からわかったことをまとめると、アルコールが関連する被害は、さまざまなレベルで増えているのに、死亡証明書にはアルコールの関与は記載されないことが多い。アルコールと死亡の関連をしっかりウォッチすることは、アルコールの人体への影響をより理解し、対処するために必要不可欠なことなのです」ジョージ・F・コーブはそう語った。

 この研究結果は、『Alcoholism: Clinical and Experimental Research』誌に掲載された。

早田ひな、涙の初優勝

 早田ひな、涙の初優勝 
女子シングルスで優勝し、涙を流す早田ひな(後方は石川佳純)

◆卓球 全日本選手権 最終日(19日・丸善インテックアリーナ大阪)
 女子シングルスで早田ひな(19)=日本生命=が初優勝を飾った。準決勝で伊藤美誠(19)=スターツ=を4―3、決勝で石川佳純(26)=全農=に4―1に勝利し、東京五輪代表に2連勝。全日本女王の称号を手にすると、コートにしゃがみ込み、涙があふれ出た。
 早田を指導する石田大輔コーチも試合後、感極まった。ワールドツアーなど国際大会を転戦し、1年のほとんどの時間を一緒に過ごしてきた。補食のためのおにぎりを握るなど、献身的なサポートを続けてきた石田コーチはベンチに戻ってきた早田に「よく頑張ったね。良かったね」と声をかけた。「普通の言葉ですけど、それ以上の言葉はないと思った」とねぎらった。
 年明け、早田から「自分で限界を作らずにやってみたいです。思い切って頑張ってみたい」と決意を伝えられた。今月6日に東京五輪代表から落選後も2人で前を向くことを決め、努力を続けた。ある日、練習場から帰ろうとすると、電気がついたままだった。「ひょっとしたら、ひな練習してるかもな」。そっとのぞくと、夜遅くにサーブ練習に取り組む姿があった。
 早田の魅力は「大砲」や「バズーカ」とも称されるパワフルな両ハンドだ。中国選手にも負けない武器を持つ一方で、勝ちたい気持ちが力みやミスにつながることも多かった。そのことがあと一歩、あと1点で勝ちきれない試合が続いた要因にもなった。
 持ち味を大事にしつつ、練習から力のコントロールも意識した。今大会は難しいボールは少し力を抑えてつなぎ、チャンスを待って思い切り振り抜くことで、安定感が増した。「本当に苦しい時から頑張ったなって(代表を外れ)僕も1月はテレビも見られないぐらいしんどかったけど、(本人は)それ以上に苦しかったと思う。その中でも明るく楽しく練習を頑張っていた。今日もグッと自分で気持ちを抑えて、随所に練習してきたことが出ていた。『頑張ったな』って褒めてあげたい」。挫折を糧に成長した教え子の姿に目を細め、涙を拭った。

その時代に生きた人々の息づかいが感じられる写真集に

1985年~1986年の大阪で撮影された1000枚超ものモノクロ写真が一挙公開、その時代に生きた人々の息づかいが感じられる写真集に 2020年2月8日、 kouichi morimoto さんが1985年から1986年ごろに大阪で撮影した1000枚もの写真を、写...