神戸市立東須磨小学校で起きた教師間の暴言・暴行事件は大きな波紋を呼んだ。奈良県でも小学校教諭4人が同僚によるいじめとパワハラを訴え、二学期の始業式から休んでいることが10月24日に報じられている。
教師は本来、こういった行為がいけないことであると子供たちに説かなければいけない立場だ。なぜこのような事態が起きてしまうのか、どのような対策を講じる必要があるのか。10月30日放送の『深層NEWS』(BS日テレ系)では神戸の事件を特集、明治大学准教授の内藤朝雄氏、名古屋大学大学院准教授の内田良氏、文部科学副大臣の亀岡偉民氏が議論した。
教育現場は暴力行為を軽視している
事件が起きた背景として内藤氏は教育現場の閉鎖性を指摘した。いわく、学校には「市民社会の論理が入らなくて、どこにでもあることがエスカレートしてひどくなりやすい特徴がある」。この事件から教員間の序列関係を表す“ティーチャーカースト”という言葉も広まりつつあるが、学校という施設は閉鎖空間になりやすいため、社会のルールではなく組織内のルールが優先的になりやすく、パワーバランスにも偏りが生じやすくなるという。
内藤氏が指摘するように学校現場は市民社会の論理と乖離した側面がある。文部科学省の「平成29年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」でまとめられている、教員の不適切な好意に対する懲戒処分等の状況を見てみよう。2017年に「わいせつ行為」(総計226人)をした教員の8割が「免職」(120人)、「停職」(57人)となった。一方、「体罰」(585人)は「免職」(0人)、「停職」(14人)と圧倒的に少なく、「訓告等」(464人)が最多である。「わいせつ行為」と「体罰」を同列に扱うことは難しいが、これだけ処分内容に差が出るのはおかしい。
内藤氏は「社会で許されないことは学校でも許されない。この原則をキチンとすれば暴力に関してはかなり小さくすることができる」と述べたが、警察だけでなく外部組織が積極的に介入し、学校現場の誤った常識を正していくことが望まれる。体罰だけではなく、教師間や生徒間で起きた暴力行為にも警察が介入することが当たり前になってほしい。
では、ハラスメントに苦しむ教師はどこに助けを求めれば良いのか。神戸の事件では、今年6月に20代の男性教員が尻を叩かれてミミズ腫れができたことを校長に相談したが、そのことを校長は市教育委員会に報告していないことが発覚し、加害教員だけでなく校長の対応にも厳しい目が向けられている。
このことから内田氏は、「(校長に)助けを求めても状況は動かないという辛いことがあった。解決できない時にすぐに相談できる窓口があると良い」と指摘し、「ただ、教員向けの相談窓口はタブー視されている。教員でもこのような事態が起きるという前提で、相談できる窓口が必要だ」と、教員が気軽に相談できる環境の整備を提案した。
相談窓口の状況について質問を受けた亀岡氏は「神戸市で言えば、市役所にある総合相談窓口、教育委員会にある教職員相談室などが活用できる。このことが周知徹底されていないことが問題」と語気を強めた。
教師間のトラブル発覚はこの先もまだ増える
冒頭に記したように、10月24日の産経新聞では、奈良県大和郡山市にある市立郡山南小学校の教員4人がいじめやパワハラを理由に9月の始業式から休んでいることがわかったと報じた。20代の女性教員が50代の女性教員から「秘書」というあだ名を付けられ、雑務を押し付けられたり、連絡事項を伝えてもらえなかったりなどのハラスメント被害を受けたという。他の教員3人も同僚から「あなたの代わりはいくらでもいる」と暴言を吐かれたり、高圧的な態度を取られたりなどしたようだ。
教育新聞が実施した「教員同士のいじめやハラスメントを見聞きしたことがあるか?」というアンケートでは、「被害経験がある」(45%)との回答が半数近くもあった。今後も教員間の問題は浮き彫りになっていくだろう。いや、これを契機に膿を出し切るべきだ。警察の介入や相談窓口など、早急な対策が求められる。
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