2019年12月24日火曜日

協議離婚の落とし穴

養育費増額でも「もらえない」 協議離婚の落とし穴



 最高裁の司法研修所は23日、養育費算定表の新基準を公表した。養育費算定表の改定は、2003年に公表されて以来16年ぶりである。
 養育費算定表は、元夫婦それぞれの収入や子どもの年齢・人数に応じ、別居親が子どもと暮らす親に支払う養育費の金額の目安を提示した表だ。離婚調停などにおいて広く利用されている。
 旧基準については「金額が安すぎる」「ひとり親家庭の貧困を招いている」との批判が多く出ていた。2016年には、日本弁護士連合会(日弁連)が独自の算定表を発表したこともある。
 新基準では税率や物価、子どものライフスタイルの変化を加味。旧基準よりも受取額が1~2万円増えるケースも多いという。また、2022年4月に成人年齢が18歳に引き下げられるが、養育費は子どもが満20歳に達するまで支払う義務があるとしている。

養育費を回収できている母子家庭は24%

 しかし、離婚時に養育費の額を取り決めれば、確実に受け取れるというものでもない。実際に養育費を回収できているひとり親家庭は多くはないのだ。
 「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」(厚生労働省)によると、母子世帯で「現在も養育費を受け取っている」のは24.3%。母子世帯の母の4人中3人が養育費を受け取れていない。父子世帯でも「現在も養育費を受け取っている」のはわずか3.2%に過ぎず、「養育費を受けたことがない」が86.0%と大多数を占めている。
 こうした現状を受け、兵庫県明石市では、不払いの養育費を立て替える新条例の準備を進めている。
11月の検討会では、養育費不払いが確認されると、市が養育費を立て替えてひとり親家庭に支払い、支払い義務者に支払い命令を出して立て替え分を回収する方針が固められた。立て替え分が支払われなかった場合は「過料」を科すという。それでも従わなかった場合は、「氏名公表」も視野に入れているそうだ。
 なお、実は養育費の「強制執行」は現行制度でも可能だ。公正証書や調停調書などで養育費の取り決めがなされ、相手の勤務先や銀行口座が判明していれば、給与や口座を差し押さえることができる。

養育費の取り決めをしている離婚は半数以下

 明石市の取り組みや強制執行は、あくまでも養育費の取り決めがされているケースが対象だが、そもそも離婚時に養育費の取り決めをしていないというケースも多々ある。
 前掲「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯で「養育費の取り決めをしている」のは母子世帯で42.9%と全体の半数以下で、父子世帯では20.8%にとどまる。養育費の不払いや、養育費の金額が見合っているかどうか以前に、養育費の取り決め自体が困難なケースの離婚がかなり多いということだろうか。
 離婚の方法は様々あるが、日本では協議離婚が圧倒的に多い。十分な話し合いとその後の養育に関する取り決めがなくとも、離婚届さえ提出すれば離婚が成立する。
 性急な離婚に走らざるを得ない側面もあるのかもしれない。「養育費の取り決めをしていない」母子世帯が、養育費の取り決めをしなかった「最も大きな理由」として答えているのは、「相手と関わりたくない」(31.4%)だ。
 次いで、「相手に支払う能力がないと思った」(20.8%)、「相手に支払う意思がないと思った」(17.8%)、「取り決めの交渉がわずらわしい」(5.4%)、「相手から身体的・精神的暴力を受けた」(4.8%)などとなっている。
 養育費算定表の改定は、ひとり親家庭が貧困から脱却するための第一歩だ。しかしながら、養育費の取り決めまでたどり着けていないという深刻な問題があることを忘れてはならない。協議離婚制度の見直しや司法の介入、養育費をどう徴収していくかも、同時に検討を進める必要がある。


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