2019年12月8日日曜日

アメリカの高額な医療費

アメリカの高額な医療費を聞かされた時のイギリス人の反応

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 アメリカの高額な医療費問題は世界でも話題となっている。病院にかかる費用だけでなく、近年は医薬品の急激な価格上昇も重ねて問題になっている。

 アメリカでは健康保険は個々で加入しなければならず、お金に余裕がない人々は適切な治療を受けられないという厳しい現状を突きつけられている。

 一方、イギリスの公的保険医療制度は、「全ての国民に公平なケアサービスを」という目的で1948年に開始された国民保健サービス(NHS)により、手術や治療、出産費用などの医療費は、原則無料となる。
 
 日本と同じような医療システムのあるイギリス人が、高額なアメリカの医療費を聞かされたら、いったいどのような反応をするだろうか?街頭インタビューを行った映像がYoutubeに投稿されていたので見てみることにしよう。 

イギリス人にアメリカの医療費について街頭インタビュー

 12月3日、英国とアイルランドの若者を対象にしたウエブサイト『JOE』が、街頭インタビューを行い、その様子をツイッターで公開した。

 イギリス人に、アメリカの医療費に関する質問をした後、実際にかかる金額を告げたところ、回答者らは一様に驚きを隠せなかったようだ。
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インタビュアー:アメリカで救急車を要請したらいくらかかると思いますか?
回答者:無料じゃないの?
インタビュアー:2500ドル(約272,000円)かかりますよ
回答者:は!?なんじゃそりゃ??

街頭インタビューでは、引き続きアメリカの医療費の高さを知ってもらうために、喘息や鼻炎用の吸入器、エピペンの値段、また出産費用などを若者に尋ねてみた。

 吸入器が250ドル(約27,200円)~350ドル(約38,000円)もかかるのを知った女性はショックを受け、「じゃあ、貧乏で払えなかったら死んじゃうってことよね」と発言。

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エピペン2本の値段も、イギリスでは無料となるところ、アメリカでは600ドル(約65,000円)という破格の値段になることを知った男性は、驚きで言葉がでない様子。

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更に、出産費用についても平均1万ドル(約109万円)~3万ドル(約330万円)かかることを聞かされた男女は、ともに「子供産むのにそんなにかかるなんて信じられない」「バカバカしい」と驚きを露わにした。

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出産時に子供を抱くのにもお金がかかるアメリカ

 出産費用だけでなく、我が子を産んで腕に抱きしめることにも費用がかかるとなれば、更に驚かざるを得ないだろう。

「アメリカでは、帝王切開で出産して、その後スキン・トゥ・スキン・コンタクト(母親が生まれたばかりの子供と素肌で触れ合うこと)に40ドル(約4400円)かかるんです」と言ったインタビュアーに対し、「自分の子供を抱くのに!? お金を払わなければならないの!?医者を殴ってやる」と呆れる女性。

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アメリカでは、医療に関わる全てのことに高額な費用がかかることを知り、回答者らは、今更ながらNHSシステムのありがたさを実感したようだ。


やっぱりアメリカの医療費は高額


 NHSは英国内全ての人が平等に医療ケアを受けることのできる素晴らしいシステムであり、普段はそれを当然のように利用している人も多い。

 しかし、他国との違いを目の当たりにし、この男性は次のように応えている。
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実際にかかる費用がどれぐらいなのかってことはわからないけど、アメリカの3万ドルの出産費用はバカバカしすぎるね。イギリスでは、NHSが一生懸命やってくれているから、感謝しないと。

また、ある女性は「素晴らしいシステムだと思う。廃止にしないでほしい」と話し、別の女性は、最後にこのように発言した。


アメリカの医療費の高さには、ショックで言葉もないって感じ。そんなに高いなんて思ってもいなかったわ。製薬会社も利益だけのために薬代を上げるのを止めるべきよ。そんなシステム最低だわ。トランプなんてクソくらえ!

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 とはいえ、NHSも利点ばかりではない。イギリスは、病院での専門医の診察を受ける前に必ず登録先の一般診療の診察を受け、紹介状を介して専門医に会うシステムのため、専門医に会えるまでの時間が予想以上に長くかかったり、予約がなかなか取れなかったり、一般診療で満足のいく検査をしてもらえなかったりと、細かい点をあげれば不満の声も出てくる。

 しかし、アメリカと比較すればまだ許容できる範囲だろう。


イギリスの医療費はNHS運営により処方薬を除き無料

 イギリスの公的保険医療制度は、National Health Service(NHS)と呼ばれる国民保健サービスで、その内容はパブリックとプライベートがあるが、イギリスでは多くの人がNHSのパブリックサービスを利用している。NHSは国家予算の25.2%が投じられ運営されている。

 イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つの地域に分割されており、医療サービスの内容や予算編成、治療などは地域ごとに異なるが、英国内のNHSの予算は全体的に厳しいために、常に医師や看護師不足が問題となっている。

 しかし低予算の現状でも、NHSは「患者の医療ニーズに対して公平なサービスを提供することを目的」として1948年のサービス開始以来、診察、治療、手術や出産費用などの医療費の自己負担を原則無料とし、全額公費で賄っている。

 また、処方薬は薬一種類につき9ポンド(約1300円)かかるが、16歳未満や60歳以上、妊婦、糖尿や甲状腺などの慢性疾患を抱えている患者、生活保護手当受給者など、ニーズの高い人たちは薬代が免除されるため、事実上約9割の処方薬が無料で提供されていることになる。

 このようにイギリスでは、アメリカのように経済的理由によって受診を控える必要がないだけに、厳しい現状に身を置く人々を想像することは容易ではないのだろう。

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 日本にも公的医療保険制度があるため、アメリカのような恐ろしい高額請求をされることはめったにないが、医療保険財政が厳しくなっているのが現状で、つい最近、市販の医薬品と同じような効果があり代替が可能な薬(市販品類似薬)について、公的医療保険の対象から除外する方向で調整に入ったそうだ。

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