2019年12月23日月曜日

美白クリーム

美白クリームの影響で血中の水銀濃度が通常の500倍以上になった女性が昏睡状態に



歴史をひもとくと「古代エジプト人は有害な鉱物を粉にして化粧品としていた」とされており、美の追求はしばしばリスクを伴っていたようです。21世紀のアメリカでも、白く美しい肌を求めて美白クリームを使用した女性が、極度の水銀中毒により昏睡状態になるという、重大な健康被害が発生したと報じられました。


カリフォルニア州サクラメント在住の47歳の女性が、最初に異常を訴えたのは2019年7月のこと。病院で女性は、感覚の異常や、腕に力が入らなくなったと医師に相談していました。その後、2週間後に女性が病院を訪れた際には、発声障害や視界不良、歩行困難になるなど症状が悪化しており、緊急入院することに。病院での治療中も女性の症状は重篤化の一途をたどり、ついには意識混濁や奇妙で脅迫的な思考や幻覚に見舞われるせん妄状態に陥ってしまいました。

女性の症状の原因を探るべく、医師が血液検査を実施してみると、女性の血中の水銀濃度は測定可能な値の上限を超えており、なんと測定不可能という結果に。測定結果がどうであれ、極度な水銀中毒であることが判明したため、病院は栄養チューブで水銀中毒の治療に用いる薬剤を経口投与しつつ女性の家族に聴き取りを行って、水銀中毒の原因を探りました。その結果、原因は女性が長年愛用してきたメキシコ製美白クリームに含まれていた水銀だということが判明しました。

WHOの(PDFファイル)報告書によると、アフリカやアジアに住む女性や、欧米に住む肌が黒い人の間ではしばしば無機水銀が含まれた美白クリームが使用されているとのこと。無機水銀は人体に有害な成分ですが、皮膚を黒くするメラニン色素の生成を阻害する働きがあるので、強力な美白効果をもたらしてくれることが知られています。



無機水銀を含む美白クリームには、多ければ20万ppmの水銀が含まれていることがありますが、女性が使用していた美白クリームに入っていた水銀は1万2000ppmでした。水銀の含有量が比較的少ないにもかかわらず、女性が極度の水銀中毒に陥ったのは、美白クリームに含まれていた水銀が無機水銀ではなく有機水銀の一種であるメチル水銀だったからです。メチル水銀は水俣病の原因にもなった物質で、神経系への毒性が極めて強いという特徴があります。

水銀中毒により入院を余儀なくされた女性は、メチル水銀が含まれた美白クリームを7年間にわたり、1日に2回顔に塗布していました。そのため、カリフォルニア州毒物管理局(CPCS)が改めて女性の血液サンプルを検査にかけたところ、女性の血中水銀濃度は1リットル当たり2620マイクログラムにも達していました。通常、血中の総水銀量は多くても1リットル当たり5マイクログラムを超えないとされていることから、女性の血中水銀濃度は通常の524倍だという計算になります。

匿名を条件に、地元のテレビ局CBS Sacramentoの取材に答えた女性の息子は「母はクリームに水銀が入っていることを知っていましたが、よく効くので使用を続けていたようです。まさか、ただの美白クリームだけでこんなことになるなんて、思ってもいませんでした」と話したとのことです。CBS Sacramentoによると、長期にわたるキレーション療法にもかかわらず女性は昏睡状態のままで、回復の見通しは立っていません。また、問題となった美白クリームの詳細な製造元や流通状況は依然としてはっきりしておらず、カリフォルニア州公衆衛生局(CDPH)は今後、出どころについての捜査や、市場に出回っている製品のスクリーニング検査を進めていく考えだとのことです。

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