アメリカの高額な医療費は世界でも有名だが、どうやらアメリカ人の一部は、高額な医療費を請求される病院に行く代わりに、魚用の抗生物質を服用しているらしい。
観賞魚用の抗菌薬として販売されている魚用抗生物質は、他の抗生物質と違い、医師に処方してもらなくてもネットで簡単かつ安価で手に入れることができる。
ある研究グループが、魚用抗生物質を販売するサイトのレビュー欄を調べてみたところ、驚いたことに、少数ではあるが、それでも無視できない割合の購入者が人間に使っているらしいことが判明したのだ。
動物用の抗生物質を人間に使用する危険性
研究グループの1人であるアメリカ・サウスカロライナ大学のブランドン・ブックスターバー氏は、「少量かもしれませんが、動物用の抗生物質が人間によって服用されているのは懸念すべきことです」と話す。医師に処方されない抗生物質を個人が勝手に服用しているとなると、耐性菌が増加したり、適切な治療が遅れる結果につながる恐れがあるという。
調査されたコメント欄には、魚用抗生物質の効果をかなり高く評価しているものもあるようで、それがさらに利用を広めることになりかねない状況だ。
ネット通販に出回る抗生物質
2019年12月に米国病院薬剤師会の学会で発表された調査では、24のウェブサイトで、ペニシリンやアモキシシリンなど人間に使われているものを含む、9種の抗生物質が販売されていることが確認された。そこに投稿された2228コメントのうち、人間に使ったことを示すのは55コメントのみだ。しかし、それに対する注目度はかなりのもので、「いいね」と「よくないね」の数は他の9倍にも達していた。
また人間が服用してもいいのかという質問に対して、少なくともひとつのネット販売者が適切だと回答していた。
今回調査された魚用抗生物質5製品は、人間用のものとまったく同じ印・色・形をしており、このことが人間への使用を躊躇させない要因になっている可能性もあるようだ。
高額な医療費が背景か
動物用の薬を服用するアメリカ人が増えているという事例証拠もある。ニューヨーク市のある救急医によると、魚用抗生物質を服用しすぎて搬送されてきた患者がいたという。その患者は保険に入っていなかったため、自分の判断で魚用抗生物質を服用し、そのために体調を崩して、余計に医療費を支払う羽目になったそうだ。
アメリカは医療費が高額になることで知られている。ある調査によると、米国内では少なくとも2700万人が保険に未加入であるために、医療機関を利用できていないのだという。
魚用の抗生物質を服用する人が増えているのも、こうしたことが背景にあるのかもしれない。
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